この作品について
視線を奪う力がこの一枚の魅力です。理由は、淡いピンクの世界観の中に、折りたたみ携帯で組み上げた玉座という硬質な主役がしっかり存在しているからです。背もたれから座面、足元まで続く携帯端末の積層、光を透かすクリアなブロック、頬の近くに添えた指先、床に反射するメタリックピンクの厚底ブーツが、中央の人物を舞台のように押し上げています。やさしい色でまとめながら印象は弱くならず、シュールファッションとしての芯が通った作品になりました。
コンセプト
狙ったのは、懐かしい通信機器を幻想的な権威の象徴へ変えることでした。単なるレトロ表現に留めず、かつて日常にあった折りたたみ携帯を、座るための構造物として再編集することで、記憶と憧れを同時に呼び起こせます。白に近いプラチナブロンドの髪、高めのネックラインを持つ艶のあるボディスーツ、透明なローズピンクのコート、左右に咲く百合の花が重なることで、機械的な椅子に静かな気品が宿りました。無機質と繊細さを衝突させながら、美しさの新しい輪郭を探った作品です。
苦労ポイント
制作では、Midjourneyで玉座の説得力を保つ作業にかなり苦戦しました。携帯を強調すると椅子の形が崩れ、逆に椅子として安定させると透明ブロックばかりが目立ち、肝心の折りたたみ携帯が埋もれてしまったためです。さらに、clamshell mobile phonesと指定しても一部がストレート型の端末になったり、花が広がりすぎて主役が百合の装飾に見えたり、座った脚のラインや手元の接触が不自然になる失敗も出ました。構造、素材、ポーズの優先順位を細かく調整したことで、ようやく“携帯でできた玉座”として読める一枚へ近づけています。
さいごに
惹かれる理由は、きれいだからだけではありません。自分の感性を、言葉ではなく雰囲気で示したいという欲求に触れてくるからです。透明感のあるピンク、古い携帯の気配、百合のやわらかさ、磨かれた床の反射がひとつにまとまることで、見る側は作品そのものだけでなく、自分がどんな美意識を選び取りたいかまで意識させられます。ありふれた華やかさでは満たされない人ほど、この静かな異物感を手元に置きたくなるはずです。もしこの作品を気に入っていただけましたら、ご購入いただけるとうれしいです。
