この作品について
静かなベージュの画面に美容道具を並べながら、ひとつの顔を立ち上げた作品です。額の位置には横長のミラーが置かれ、左右には大きさの異なるコームがまっすぐ並び、中央には透明感のある鼻筋と青い瞳が浮かんでいます。ふっくらした唇だけが生々しい存在感を持ち、その周囲をコンパクト、香水瓶、マスカラ、ビューラー、口紅が囲むことで、顔と物の境目がゆっくり曖昧になっていきます。整然とした配置なのに、見れば見るほど素顔の定義が揺らぐところに、この作品の魅力があります。
コンセプト
軸に置いたのは、美の道具と素顔の境界を問い直すことでした。メイク道具は本来、顔を引き立てる脇役のはずですが、この作品ではそれらが顔の輪郭や印象を支える主役として機能しています。透明な素材で形づくられた鼻や頬まわり、ミラーの無機質な額、マスカラやリップが加わることで完成する表情は、何も足していない素顔よりも、むしろ現代的な“顔らしさ”を帯びています。美しさは生まれつきのものだけではなく、選び取った道具との関係の中で形づくられる。その感覚を、できるだけ静かに見せたかった一枚です。
苦労ポイント
制作で難しかったのは、顔のパーツ配置を崩さずに、美容道具と顔の境界を自然に溶け合わせることでした。Midjourneyでは、目の位置がずれたり、唇だけが過剰に大きくなったり、鼻と透明パーツが混ざって輪郭がぼやけたりと、少し条件が変わるだけで全体のバランスが崩れやすくなります。道具を強く出しすぎるとただの物撮りになり、顔を優先しすぎると再構築の面白さが消えてしまうため、その中間を探る調整にかなり時間を使いました。きれいに整っているのに、どこか人工的で落ち着かない。その絶妙な均衡にたどり着くまで、何度も出力を見直した作品です。
さいごに
ビューティー表現に惹かれる人ほど、実は単なる華やかさよりも、自分の感覚や価値観を映してくれる作品を求めていることがあります。道具を使って顔を整える日常は誰にとっても身近ですが、その行為をあらためて見つめ直すと、自分がどんな美しさに惹かれているのかまで見えてきます。眺めるたびに“美しさはどこから始まるのか”を考えさせてくれる点こそ、この作品の持ち味です。もしこの作品を気に入っていただけましたら、ご購入いただけるとうれしいです。
