この作品について
最初に感じてほしいのは、この異様な整然さです。結論から言えば、この作品は人間が無機質に並べられ、評価される存在になってしまう感覚を描いた不気味なポートレートです。理由は、飲み物や商品が並ぶはずの自販機の中に、年齢も性別も肌の色も異なる顔だけが規則正しく収められているからです。青い目をした若い女性、深い視線の黒人男性、しわの刻まれた中年男性など、それぞれの顔は強いリアリティを持ちながら、小さな数字表示やパネルに区切られることで“選ばれる対象”へ変わっています。右側の操作ボタンや発光する表示も、その異様さをさらに機械的なものに見せています。人の顔がここまで商品棚のように見えてしまうこと自体が、この作品の怖さです。
コンセプト
言いたかったのは、私たちが社会の中で常に価値づけされ、見えない査定にさらされているということです。そう考えた理由は、人間そのものよりも、外見や能力、印象のほうが先に評価される場面があまりにも多いからです。この作品では、顔が一枚ずつ同じサイズの窓に収まり、それぞれの下に数値のような表示がついています。その光景は、人格ではなくスペックとして並べられた人間の姿そのものに見えます。しかも表情は大きく崩れていないため、叫びや怒りよりも、静かに受け入れてしまっているような不穏さが残ります。つまりこの作品は、人が“誰か”である前に、“値づけされる存在”へ変わってしまう社会への視線を込めたポートレートです。
苦労ポイント
一番難しかったのは、重く暗いテーマを保ちながら、絵全体がつぶれて見えないように調整することでした。理由は、Midjourneyで生成した段階では全体が暗く沈みすぎて、顔の違いも自販機の構造も読み取りにくくなっていたからです。さらに、影を持ち上げすぎると今度は画面が平べったくなり、せっかくの不気味さや立体感が弱くなる問題がありました。生成上でも、顔の向きが不揃いになったり、機械のパネル部分が崩れたり、文字や数値の表示がノイズのように乱れる失敗が出やすく、均一な“陳列感”を出すのに苦労しました。そこでレタッチでは影を少し残しつつ、顔ごとの輪郭と光の差を丁寧に整え、不穏さと視認性の両方を成立させました。暗さを消すのではなく、意味のある暗さとして残したことが、この作品の完成につながっています。
さいごに
人は案外、自分でも気づかないうちに「自分の感覚を代弁してくれるものを持ちたい」と思っています。結論として、この作品はその欲求に静かに応える一枚です。理由は、ただ不気味なだけではなく、社会の中で感じている息苦しさや、見られ続けることへの違和感を、目に見える形へ置き換えているからです。顔が並ぶ冷たい棚、機械のボタン、光る表示、そして一人ひとりの視線が重なることで、この作品は単なる奇抜さでは終わらないメッセージを持っています。見るたびに意味が増え、自分の中の言葉にならない感覚をすくい上げてくれる。そんなアートを求める気持ちは、すでに多くの人の中にあるのかもしれません。もしこの作品を気に入っていただけましたら、ご購入いただけるとうれしいです。
